最近はあんまり小説は読んでいませんが本屋さんに2020年本屋大賞受賞と飾ったあったので「流浪の月」という本を読んでみました。
ふと手に取った作品でしたが、テーマも斬新でとても面白い作品だったので今回はネタバレを少なめに流浪の月の感想を書いてみたいと思います。
作者の凪良ゆうさんはもともとBL作品を中心に描いていた方ですが最近は非BL作品にも力を入れていた方のようですね。(原著より)
ざっとあらすじ
全く内容は知りたくない人はここは読み飛ばしてくださいね。
小説では一風変わった家庭で自由に育った更紗という女の子が主人公です。
自由な生活をする家庭で育ちますが、その自由さは他の周囲の子供たちにはなかなか受け入れられません。
そして幸せだったはずの生活の歯車も急に狂い始めてきてしまいます。
そんな中で会うのがもう一人の主人公である文です。
文はきちんとした生活を送る大学生でした。
現状の生活に不満を持っている更紗と生活を共に送ることになった文はその自由さに引き込まれていきます。今まで送ってきたきちんとした生活が全てではないことを知ります。
そんな二人ですがその幸せな生活も長続きはしません。
一度離れ離れになってしまい長い年月が経っていきます。
お互いにお互いの道を歩んでいましたが、二人は再び出会います。
二人ともその長い年月の間に様々なことを経験します。
そして再び出会った更紗と文は過去と闘いながら幸せな生活というものを追い求めていくというストーリーです。
この物語のテーマ
この物語はいくつかの現代社会の問題点に対して疑問を投げかけているようにも感じました。
僕がこの本を読んで印象に残ったものをここからは書いてみます。
暗黙のルール
今の日本には暗黙のルールのようなものがいくつかあります。
例えば「小学生はランドセルで通学する」「ニュースで容疑者として捕まった人は悪い人である」などと言ったイメージがあると思います。
ただこのようなことには根拠はないですよね。
ランドセル小学生向けの軽い鞄であればいいのですが、正直普通の鞄のほうが子供が持つにはいいはずです。
この作品の主人公の更紗はこう言ったルールに囚われない自由な生活をする家庭で育ち、自由な考え方を身に付けますが、これらのことはなかなか周りの小学生には受け入れられません。
そして周りの人と合わないことに悩んでいた時に出会うのがもう一人の主人公である文です。
文は更紗とは違い、厳密な家庭で育てられます。
そして、他人には理解してもらえない秘密も持っています。
そんな中、自由な更紗と出会い文の生活は変わっていきます。
現代の情報社会の問題点
最近はインターネットも発達し、多くの人がその情報を頼りにしています。
インターネットに乗っている情報は匿名で投稿でき、その情報は自分の意思では消すことができません。
そんな現代の情報社会における問題点もこの作品を読んで感じました。
犯罪者は犯罪者?
罪を犯した人は果たして本当に悪なのでしょうか。
最近だとしばしば冤罪のニュースを目にすると思います。
このようなこともあるので一概に捕まったからと言ってその人が悪であるとは言えないはずです。
しかし、現在はインターネットも発達しており、少しでもニュースに名前が載った人はその人の過去、家族についてなど検索されてネットに晒されてしまいます。
そして一度公になってしまった誤ったイメージはなかなか消すことができません。
被害者は被害者?
上の話と同様のことが被害者の方にも言えます。
被害者は被害者として周囲にそのような目で見られます。事件の被害者であることは消すことができず、常にかわいそうな人というような目で見られます。
ただそもそもその事件が事件でなかった場合、その人は被害者ではなく、普通の人です。
しかし実際に起きたことに関してはマスコミの報道くらいしか世の中には出回らないためなかなか真実は理解してもらえず、仮に説明したとしても多くの人はマスコミの内容が正しいと聞く耳を持ってくれません。
真実を知っているのは当事者であるにもかかわらず、かわいそうな被害者というバイアスから逃れることはできなくなてしまうのです。
変化は必要?
世の中にはこの人って少し変わっているなという人がたくさんいると思います。
ただ人間は人それぞれ同じわけはなく、それぞれの考え方があっていいはずです。
主人公の二人は世の中の常識に近づこうとしますがそれはなかなかうまくいきません。
そして最終的には変化は必要なく、自由に自分たちの道を歩んでいくのが正解ということを見つけます。
まとめ
この物語では他人と異なることを認めない社会と現代の情報社会、この2点のテーマがあるように感じました。
確かに自分の生活でも特に理由なくそうしてしまっていることはたくさんあるかもなと思いました。1日3食とかもそうですよね。
とは言っても最近は小学校に行かないなど言っている人もいますし、ランドセルに関しても僕が小学校の頃からリュックの人もいました。自由な発想が徐々に認められるようになっているようにも感じます。
ネット社会の問題点に関しては最近もテラスハウスの事件で問題になっていましたが、匿名による情報発信などは現代の抱える大きな問題となってきていますね。
一度ついたイメージはなかなか変えることができないですし消したい情報も消すことはできません。
流浪の月という題名は最後まで読んでようやく理解できました。(正しいかわからないですが…)
決して表に出ることのできない存在でありつつもそのイメージから逃れながら力強く生きていく。そんな感じの意味だと思います。題名にもこだわりを感じますね。
現代社会の問題点も踏まえつつ、なかなか読むのをやめられないストーリーでとても面白い作品でした。
やっぱり本屋大賞に選ばれる作品は面白いですね。
まだ読んでいない人はぜひ読んでみてください!
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