実際に働いてみてわかった日本医療の問題点【前編】

実際に医者として働いてみると
日本の医療っておかしくないだろうか?
って思う機会がたくさんあります。
僕はまだ医者になって2年目ですが、すでにたくさんの問題点が医療にあると思っています。

今回の記事ではこれまで1年間と少し働いてきて気づいた医療における問題点を書いてみたいと思います。個人的な意見も多いため一つの考え方として読んでみてください。

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今回の内容

最初にこの記事に書いている医療の問題点を挙げておきます。

  • やりとりが手紙 or FAX
  • そもそも病院が利益を追求しにくい。
  • 医師の診療科、地域の偏り
  • 厳しい労働時間
  • 医療訴訟の問題
  • 破綻している医療保険制度

少し長くなってしまうので前編後編に分けています。
この記事では上の4つに関して書いています。

やりとりが手紙 or FAX

今の時代ほとんどの通信がネットワークによって行われています。

何かを買ったり、最近では会議をしたり、あらゆる行為がインターネットを通して行われている時代です。最近の子供はもう手紙は書かないのではないでしょうか。

そんな時代に医療業界では病院間のやりとりをFAX、手紙で行なっています。

具体的には患者さんが重症になってしまいクリニックなどでは対応が困難な場合、他の病院に紹介することになります。こういった際に病院ではその患者さんの情報を紹介状といった形で送ることになっています。

ただこの紹介状ですが、いまだに手紙もしくはFAXで送られてきます。
正しく言えば、手紙もしくはFAX以外の手段が導入されていません。

しかも、この手紙やFAXに関してもパソコンで打たれている文字であればいいのですが、一部のクリニックなどでは丁寧に手書きで書いてくれる病院があります。
パソコンに慣れていない医師にとっては手書きで書いたほうが早く、印刷の手間も省けるからなのでしょう。
それが丁寧な文字であれば問題ないですが、医師の中には他人に読んでもらうつもりがないような文字で書く方が多いです。

僕が内科の研修で外来を行っていた時も、それなりに大きな病院だったため紹介状を持った患者さんがたくさんきました。みなさん手紙(紹介状)を持ってきますが、全く読めない手紙がたくさんありました。もはや読めないものを送るくらいなら送らなければいいのにと何度も思いました。(もちろんパソコンで文字を打っているクリニックもありました。)

手紙やFAXはもう他の業界ではすっかり廃れてしまった文化だと思います。少なくとも僕は病院以外では使っていません。

プライバシーの問題などもあるため手紙やFAXなのかもしれませんが、銀行間のやりとりなどもネットワークで行われているのでプライバシーもそこまで問題にならないと思います。

そろそろメールで紹介状を送り、画像データもハードディスクではなく、添付できるようになってもいいのではと思います。

そもそも病院が利益を追求しにくい。

日本は医療行為に対して診療報酬が決められています。
つまり病院は自分の病院で行っている行為に対しての報酬を決めることはできません。
多少の決定権はありますがかなり制限があります。
DPC制度を使っている場合はどんなに入院中に検査が行われても費用が一定になってしまいます。

つまり患者さん1人あたりの利益はどこの病院も大きな差がなく、来院した人数がそのまま利益につながります。
そのため、たくさんの患者さんが来る病院は儲かります。

医療業界は量と報酬は比例しますが、質と報酬は比例しません。
同じ手術であれば経験の少ない医師が行っても、ベテランの医師が行っても同じ報酬です。

もちろん有名な医師のもとにはたくさんの患者さんが来ると思います。
ただ基本的に技術は報酬に繋がりません。これでは努力する人も減ってしまうのではないでしょうか。

もちろん医療が利益を追求しすぎると医療費が高くなりすぎてしまい、平等に医療を受けられなくなるため、こういったことは認められないのでしょう。
医師は患者のために尽くすのが仕事でもあります。

ただ一方で製薬会社は自社で開発している薬品に対して価格を決定する権利を持っています。
抗癌剤や希少疾患の治療薬はものすごい価格です。(保険診療なので患者さんの負担はそこまで高くなりませんが税金から引かれて行きます。)

これでは製薬会社ばかりが儲かり、医療のレベルはなかなか上がらないと思います。
そろそろ医療行為も質に対しての評価が行われるようになればいいのにと思います。

医師の診療科、地域の偏り

よく医師不足というニュースを聞くと思います。
でも本当に医師は不足しているのでしょうか。

答えは「診療科、場所によっては不足してるところもあれば足りているところもある。」だと思います。
つまり診療科で言えば、最近だと外科医が不足しているようですし、地域で言うと地方の医師が減っているようです。

ではなぜ増えないのでしょうか。

この答えは簡単で、やりたくないことをする人はいないから、つまり結局のところ人気のない診療科や地域には医師の数が増えても行かないからです。

医学部の数はどんどん増えてきています。東北では最近、東北薬科大学が医学部を新設し東北医科薬科大学になりました。一つの大学の定員は大体100人程度なのでこれで毎年100人の医師が増えることになります。

医師不足の問題は医師が増えているにもかかわらず改善していません。

ただこれは今の制度では当たり前のことです。

日本の医学部では卒業すると初期研修を2年間行い、その後一つの診療科を決定して働いていくという仕組みになっています。この診療科の決定は個人の自由となっています。
アメリカでは成績順になれる診療科が決定されますが、日本はそうではないので定員などがありません。このため診療科の人数の偏りができてしまいます。

地域による医師の数の差も深刻です。

厚生労働省のホームページによると埼玉と東京では人口あたりの医師数は1.5倍程度違うようです。(東京が多いです。)
自分の経験でもあまり東京に縁がない人でも一度は東京に行ってみたいということで東京での研修を選んでいる人もいました。

日本は医師不足と言って医学部の数を増やしていますが、このまま増やしても東京の医師が増えていくだけなので何かもう少し制度面に目を向けたほうがいいんじゃないかと思います。(最近は地域枠と言って地域での就職が決められている学生もいるようです。)

厳しい労働時間

医師の仕事で問題となるのがやはり労働時間の長さです。

クリニックとかであれば営業時間外は患者さんはみないのであまり問題はありません。
ただ、大きな病院では当直があります。
当直中は場合によっては寝ないで一晩中働き、当直が終わった翌日も仕事になります。

医師の給料は高いと言われていますが、これは純粋に労働時間が長いからだと思います。

今、自分は研修医ですが時給で考えると飲食店のアルバイトとは変わりません。

もちろん僕は研修医で教えていただいている身分なので、給料が安いことや労働時間が長いことに不満はありません。ただ年数を重ねて、家庭を持ったりすると労働時間の割に給料もそこまで大きい病院だと高くないので厳しいものがあると思います。

医師という仕事上、夜間の診療は誰かが行わなくてはいけません。
この点は医療職の宿命ではありますが、その分日中の仕事を減らせるくらいに医師の数が増えればいいとは思います。

最近は大学院生などが給料なしで働いているのも問題になっていましたね。

まとめ

今回書いたように日本の医療にはたくさんの問題が潜んでいます。

最初の病院間のやりとりがアナログであるという問題に関しては、システムもまだ存在しないですし、昔からあるようなクリニックはなかなか導入したくないと思うでしょう。

病院の利益の問題に関しては制度が変わってくれるのを待つのみですね。

診療科、地域の偏りに関してはどうしても出てしまうものだと思います。田舎で働くよりも都会で働きたい人が多いのは当然だと思います。

最後の労働時間の問題に関してはなかなか難しい問題ですが良くなってくれればと思います。

このように医療には色々な問題点が存在しています。
医療はなかなか閉鎖的なのでシステム面など、いろいろな企業などが介入してより良い方向へ導いてくれればと思います。

もう少し医療にもビジネス的な一面があれば日本の医療もより良くなっていくはずです。
倫理的には厳しいかもしれませんが…

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