最近少し研究が忙しく、あまり時間が取れなかったため2週間分の医療ニュースと一つ論文を紹介したいと思います。医療や免疫に興味を持っている人はぜひ読んでみてください!
医療ニュース
今回はCOVID-19に関するニュースとアキレス腱の断裂に対する治療に関するニュースを紹介しています。
COVID-19抗体カクテル療法が一部で軽症者にも開始
以前の記事でも紹介した抗体カクテル療法(カシリビマブとイムデビマブ)が外来でも投与できるようになるということです。この治療は基本的に初期に使用する治療薬なのでこの適応は理にかなっていますね。
ただ以前の記事でも紹介しましたが抗体というのは非常に高価なものです。現在全国的に広がっているCOVID-19に対してこのような治療を無制限に使っていくというのは経済的に限界があるのではないかと思います。お金は無限に湧いてくるものではないですからね。ワクチンも無料なので相当な医療費が税金から使われていることが考えられます。どこかに経済的なしわ寄せが来るはずなので、政府の人たちはもちろん治療も重要ですが、現実的なこと(治療の有料化など)も考えてほしいと思います。何かのイベントに参加してコロナに感染して治療費は無料というのはしっかり自粛している人の心を折る行為だと思います。
アキレス腱がiPS由来の腱細胞で回復
こちらは京都大学からのニュースです。記事内に論文も紹介されています。
簡単に説明するとiPS細胞から腱の細胞を作成し、それをマウスの腱に移植すると2-4週間程度で健常のマウスと同程度の運動機能まで回復したということです。
アキレス腱の断裂などは現状は手術ですが際負傷や長いリハビリ期間などの問題があるため新しい治療になるかもしれないということでした。iPS細胞を用いた治療は最近とても盛んではないかと思います。角膜の移植などもニュースになっていましたね。
腱の断裂に関してはアキレス腱に限らずプロ野球選手の内側側副靱帯(トミージョン手術と呼ばれているやつですね。)など他の障害もあるのでこれらにも応用されるとすごいと思います。まだマウスでの実験段階ですが、今後治療になってほしいですね。
免疫学の論文
今回はがんとT細胞に関する論文を紹介します。
頭頸部癌におけるHPV特異的な幹細胞様CD8,PD1陽性T細胞
今回紹介する論文はこちらです。
一部の頭頸部癌にはHPV(ヒトパピローマウイルス)が関わっており中でも中咽頭癌はHPVの関連が大きいというのは医師国家試験でも出題される知識だと思います。また頭頸部癌にはニボルマブなどの抗PD-1抗体が有効とされています。頭頸部癌ガイドラインよりhttp://www.jsco-cpg.jp/headandneck-cancer/guideline-2/#cq11-8
今回紹介する論文ではHPV陽性の頭頸部癌の患者さんの腫瘍からT細胞を取り、そのT細胞の中でPD1陽性のものがどのような働きを持っているかをシングルセルRNA解析などで調べています。
論文の中でHPVによって活性化するT細胞集団がいることを示しています。そしてこのT細胞達がHPVのE2とE5とE6というエピトープを認識することがわかります。
現在のHPVワクチンはE6とE7というエピトープを抗原としているため今回示したエピトープも公言に加えることでよりワクチンによる効果を発揮できるのではないかと書いてあります。
また腫瘍にいたPD1陽性の細胞が抗原刺激によって活性化することもみつけており、これらのT細胞を手術や放射線療法によって取り除いた後ではPD-1阻害薬による治療効果が薄くなってしまう可能性があるのではないかということが書いてあります。
今後はオブジーボによる術前化学療法が主流となっていくのかもしれませんね。
HPVのワクチンに関しても日本でも様々な議論がある分野なので今後の動向を見守っていきたいですね。
まとめ
今回の記事ではCOVID-19に対する抗体カクテル療法のニュース、アキレス腱への幹細胞移植のニュース、頭頸部癌とT細胞に関する論文を紹介しました。
最近実験が忙しくなってきたため医療ニュースと免疫学の論文の記事は1ヶ月に1回くらいに減らそうかと考えています。
今後も医療に関するニュースやいろいろな情報を発信していくので是非読んでみてください!
前回の記事はこちらです。
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