少し投稿が遅くなってしまいましたが今週も医療ニュースと免疫学の論文を紹介したいと思います。
医療ニュース
iPS細胞で脊髄損傷の機能回復の臨床研究
慶應大学にて脊髄損傷に対して他人のiPS細胞を移植することで機能の回復を目指すという研究ですね。交通事故などによる外相に伴う脊髄損傷に対する治療ですね。
これと似たような治療はすでに札幌医科大学で行われていました。札幌医科大学のものは自分の骨髄から取ってきた間葉系幹細胞を脊髄に投与するという方法です。
僕も研修医の時にこの治療の適当がある外傷の患者さんを札幌医科大学に送った経験があります。ドクターヘリでの搬送でしたね。
こちらの治療は指導医の先生曰く、効く人はかなり効くとのことでした。
慶應大学の方は他人のものの移植ということで札幌医科大学とは少し違いますね。脊髄損傷は基本的に重い障害が残ってしまうことが多いですが、これらの治療はかなり機能が回復できるみたいなので期待したいです。
尋常性乾癬に対してIL-17モノクローナル抗体の効果と安全性の検討
尋常性乾癬に対する新規治療薬としてIL-17AとIL-17F抗体のBimekizumabの効果を検討した論文です。第3層臨床治験みたいですね。結果としては抗TNHα阻害薬のAdalimumabよりも良い効果を示したということです。また、有害事象のカンジダや下痢が増えたという結果でした。更なる大きな治験が今後は必要になるとのことです。
この論文ではPASI scoreという指標を評価に使っています。完全に症状がなくなって人の割合がbimekizumabで60.8%、adalimumabで23.9%ということでかなり効果があるようですね。皮膚疾患はかなりQOLを下げてしまうので尋常性感染やアトピー性皮膚炎も完全に治せるような薬ができるといいですね。
免疫学の論文
RSウイルスの複製を抑制する薬品
日本では現在コロナウイルスの拡大とともにRSウイルスの感染の拡大が少し話題となっています。
RSウイルスは医師国家試験にも出題されるウイルスですね。乳幼児の細気管支炎などを引き起こします。
今回紹介する論文はこのRSウイルスの複製を抑える薬品を見つけたという論文です。
RSウイルスはウイルスの入った封入体のようなものを細胞質に作成します。ウイルスはこの封入体で複製されて増えます。今回の論文ではcyclopamineとこの化学的アナログ(似た物質)がこのウイルスの増殖に関わる封入体を破壊し、硬化させることでウイルスの増殖を防ぐことができたという内容になります。
このCycloplamineという化学物質はソニックヘッジホック経路を阻害する物質であり催奇形性がある物質です。そこでこのCycloplamineの化学アナログであるA3Eという物質がRSウイするを抑制するかを検討しています。
結果としてはA3Eがマウスの肺に感染させたRSウイルスを減らすことができたということになります。またこれらの効果はRSウイルスのM2-1という転写因子をpoint mutationにすると効果がなくなるということでM2-1がこの効果に関係していることが示されているます。
RSウイルスを抑えることができる物質かもしれないということですがA3Eも多少はソニックヘッジホック経路を抑制してしまっているようなので更なる検討が必要とのことでした。
このウイルス封入体に対する治療はさまざまなウイルスに応用できるかもしれないとも書いてあります。コロナウイルスもそうですがウイルスの治療薬はあまり存在しないので新しいものが見つかるといいです。ただ催奇形性は困りますね。
まとめ
日本でもまたコロナの感染者数が多くなってきましたね。医学論文も相変わらずコロナの論文が多いです。早く落ち着いてほしいですね。来週は早めに投稿したいと思います笑。
先週の記事はこちらです。多少は勉強になると思うのでよかったら読んでみてください。
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